トップガンマーベリックでも活躍! 米海軍戦闘機F/A-18ホーネット

航空機
U.S. Department of Defense Current PhotosPetty Officer 2nd Class Janweb Marcyn Lagazo/USS RONALD REAGAN (CVN 76), Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で https://commons.wikimedia.org/wiki/File:171111-N-CL027-264_(38412801881).jpg

こんにちは。乗り物解説の部屋です。
今回はアメリカ海軍の戦闘機「F/A-18ホーネット」について解説します。
映画「トップガンマーベリック」で主人公が搭乗する機体です。

空軍戦闘機から生まれた海軍戦闘機

F/A-18はアメリカ海軍の戦闘機ですが、その誕生にはアメリカ空軍が関わっています。

1970年代、アメリカ空軍の戦闘機F-15は高性能ですが、価格が高い為に数を揃えられないという問題がありました。そこで、F-15を補佐する為の安価な軽量戦闘機を求めました。5社の提案の中から2社の案を選定、競争試作することとなります。

こうして、1974年にジェネラルダイナミクス社のYF-16とノースロップ社のYF-17が試作されました。空軍は試験、評価の結果1975年1月にYF-16を選定、F-16として採用、量産されることとなり、YF-17は不採用となってしまいました。

同時期、アメリカ海軍は艦上戦闘機F-4ファントムⅡと艦上攻撃機A-7コルセアⅡの後継機として、両者の役割を1機種で担える艦上機を求めていました。また、空軍がF-15を補佐する戦闘機を求めたように、海軍も高性能・高価なF-14を補佐する戦闘機を求めていました。

海軍はYF-16とYF-17を審査し、1975年5月に空軍とは逆にYF-17を選定しました。これは作戦要求の違いによるもので、洋上飛行を行う海軍は安全上の理由で双発機であるYF-17を求めたのです。

YF-17は空軍向けの陸上機として開発された為、艦上機として用いる為には設計変更が必要でした。しかし、YF-17を開発したノースロップ社には艦上機の開発経験が無かった為、経験豊富なマクダネルダグラスが協力することとなり、海軍との主契約者となりました。

当初、機体は同じで搭載兵器が異なる艦上戦闘機F-18(F-4後継)と艦上攻撃機A-18(A-7後継)と2つの名称で配備する予定でしたが、議会の不評を買い共通化され、統一名称F/A-18となりました。FとAを並列表記する名称は異例です。愛称はホーネット(スズメバチ)となりました。

F/A-18A~D

F/A-18の試作機は1978年11月18日に初飛行しました。単座型9機・複座型2機が製造されました。複座型は単座型とほぼ同等の能力を持ちますが、主に訓練に用いられ、後部座席にも操縦装置がありました。

最初の量産型は単座型がF/A-18A、複座型がF/A-18Bです。1979年より生産が開始され、1980年より配備されました。F-14が配備されなかった海兵隊に優先的に割り当てられ、1983年より海兵隊で、翌1984年より海軍で運用を開始しました。

1986年には電子機器がアップグレードされた改良型が登場しました。単座型がF/A-18C、複座型がF/A-18Dです。複座型のF/A-18Dの中には訓練用だけでなく、パイロットに加えてレーダーや兵器を操作する兵装システム士官が搭乗して行う任務に対応した機体もあり、後者には後部座席に操縦装置がありません。

F/A-18は輸出も行われ、オーストラリア、カナダ、フィンランド、クウェート、マレーシア、スペイン、スイスで導入されました。このうち、マレーシアでは同時期にMig-29を導入した関係でF/A-18は異例の複座型のみの導入となっています。

F/A-18E・F「スーパーホーネット」

F/A-18の大幅改良型として大型化・能力向上を図ったのが「スーパーホーネット」ことF/A-18E(単座型)・F/A-18F(複座型)です。F/A-18AからDまでの各型は区別の為「レガシーホーネット」と呼ばれるようになります。

冷戦終結に伴う軍事費削減はアメリカ海軍の新型機開発に大きな影響を与えました。1991年、艦上攻撃機A-6の後継として開発されていたステルス艦上攻撃機A-12アベンジャーⅡと、艦上戦闘機F-14の後継となるステルス艦上戦闘機F-22Nの開発が中止されます。

その後、A-12とF-22Nの代替としてF-14を改良する「スーパートムキャット」計画もありましたが中止され、元々マクダネルダグラスが輸出用に自社資金で研究していたF/A-18の改良型がその役割を担うことになりました。

1995年に試作機が初飛行、1998年に量産機が海軍に初納入され、2001年に運用を開始しています。スーパーホーネットの登場に伴い、レガシーホーネットは2000年で生産を終了しました。

全長が伸び、主翼・尾翼面積が拡大され大型化、エンジンもF404からパワーアップしたF414に変更され、運動性が向上しました。主翼下のハードポイント(武装等を吊り下げる部分)が左右1箇所ずつ増加し兵装搭載量が増加しました。また、燃料搭載量も増加し、航続距離が延長されています。ステルス機ではありませんが、ステルス性を高める工夫は施され、一例としてエアインテークの形状が楕円形から平行四辺形に変更されています。空中給油機としての運用能力も持ち、KA-6DやS-3Bの代替となりました。

F/A-18は空軍の軽量戦闘機計画の流れをくむ戦闘機ですが、スーパーホーネットはF-14に匹敵するサイズにまで発展しました。レガシーホーネットと同様に単座型と複座型があり、複座型は訓練用と兵装システム士官が搭乗して行う任務用に分けられ、後部座席の操縦装置の有無が違いです。

また、スーパーホーネットの派生型として複座型をベースにEA-18Gグラウラー電子戦機が開発され、2009年より導入、EA-6電子戦機の後継となりました。

スーパーホーネットはレガシーホーネットと比べて採用国は少ないですが、オーストラリア(EA-18G電子戦機も採用)とクウェート(発注済み・納入待ち)で導入されています。

現在、レガシーホーネットはアメリカ海軍とオーストラリア空軍では退役済みです。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。今回は「F/A-18ホーネット」について解説しました。

空軍の軽量戦闘機として不採用になったYF-17。海軍に採用され艦上戦闘機と艦上攻撃機を兼ねるF/A-18が誕生しました。そして、冷戦終結による新型機開発中止とスーパーホーネットへの発展により、主力機に上り詰めたのです。戦闘機、攻撃機、空中給油機に加え電子戦機の派生型も存在し、様々な任務をこなしています。「トップガンマーベリック」でもF/A-18EとF/A-18Fが登場、単座型と複座型がそれぞれの特性を生かし任務を遂行しました。

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参考文献リスト

世界の最強軍用機図鑑 毒島刀也 コスミック出版

ツウになる!戦闘機の教本 青木謙知 秀和システム

Wikipedia英語版・日本語版

乗りものニュース
F/A-18「ホーネット」の大逆転劇 「空」がダメなら「海」で飛ばせばいいじゃない!
F/A-18「スーパーホーネット」なぜ1人乗りと2人乗りが? ならではの共同作戦『トップガン』新作でも

J:COMテレビ番組ガイド
戦闘機で見る『トップガン』F-14とF/A-18の違いとは? 航空ジャーナリストが徹底解説 -トップガンマーベリック-

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