ボックスシートの特急列車!? 独特な内装でデビューした初代成田エクスプレス253系

鉄道
LERK, CC BY-SA 3.0 , ウィキメディア・コモンズ経由で https://commons.wikimedia.org/wiki/File:253_series_20080601.jpg

こんにちは!今回は成田エクスプレスの初代車両、253系について解説します。253系は豪華なグリーン車と、特急としては異例のボックスシートの普通車という両極端な設備を有していました。現在の成田エクスプレスE259系とは異なる、独特なインテリアを見ていきましょう。

念願の空港アクセス特急 成田エクスプレス運転開始

1978年5月20日、新東京国際空港(現在の成田国際空港)が開港しました。空港に対する激しい反対運動の影響は大きく、開港は予定より大幅に遅れました。

成田空港にアクセスする交通も反対運動の影響を受けました。当初は東京~成田空港間に成田新幹線を建設する予定でしたが、開港には間に合わず、1983年に工事は凍結、1986年に計画は中止されました。

一方、京成電鉄は成田空港乗り入れの新線免許を申請しましたが、成田新幹線との兼ね合いで空港ターミナルビル地下への乗り入れは認められず、空港への通勤者用の名目で空港敷地内のターミナルビルから離れた場所に成田空港駅(現在の東成田駅)を開業させました。京成電鉄は開港と同時にアクセス列車「スカイライナー」を運転しましたが、前述の通り駅がターミナルから離れていたため、到着後は連絡バスで移動する必要がありました。

成田新幹線の計画中止後の1988年、成田新幹線の遺構を活用し、JR東日本と京成電鉄が成田空港ターミナル地下へ乗り入れることが計画され、JR東日本・京成電鉄等が出資する成田空港高速鉄道が設立されました。こうして1991年3月19日、成田空港駅が開業し、JR東日本と京成電鉄が乗り入れを開始、念願の空港アクセス鉄道が実現しました。

この時運転を開始したJR東日本の成田空港アクセス特急「成田エクスプレス」用に開発されたのが253系で、1990年から1991年までに1次車・3両編成21本が製造されました。

前面には貫通路を備え併結運用が可能で、分割併合や増結を行い様々な需要に対応できる車両でした。

往年のパーラーカーを思わせる豪華なグリーン車とまさかのボックスシートの普通車

快速踊り子, CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で
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クロ253の4人用グリーン個室 画像は長野電鉄譲渡後

編成はクロ253-モハ253-クモハ252の3両編成となります。

グリーン車となるクロ253は前方に4人用グリーン個室1室を設置、間にデッキを挟み、後方が開放室となっています。開放室の座席配置は2パターンが用意され、0番台車が1+1列配置・シートピッチ1090mm、100番台車が1+1列と1+2列の交互配置・シートピッチ1340mmとなっています。開放室の定員は0番台、100番台共に20名です。0番台のシートは窓側に30度向けた状態で固定することも出来ました。全21本のうち11本のグリーン車が0番台、残り10本のグリーン車が100番台です。クロ253(特に0番台)の車内レイアウトは往年の151系東海道本線特急「こだま」等に連結されたクロ151パーラーカーを彷彿とさせるものでした。

普通車は4人掛けボックスシートを採用、座席はフランス製です。特急車へのボックスシート採用は少なく、夜行運用で寝台に転換する為に採用した583系の他、グループ利用向けに採用した一部の観光特急の例があります。シートピッチは2040mmで、急行型・近郊型の1400~1500mmや583系の1970mmより広く取られました。シートは片持ち式となっているので、座席の下や背もたれ間に荷物を置くことができるようになっています。

また、車端部にも大型荷物の置き場が設けられています。

2次車~4次車は6両編成化用に増備された中間車3両編成(全車普通車)で、2次車が1992年に6本、3次車が1994年に4本、4次車が1996年に2本増備され、それぞれ1次車3両編成に組み込まれました。形式はモハ253 100番台-モハ252-サハ253で、連結位置はクロ253とモハ253の間です。内外装にいくつかの変更点があり、よく見ると後から組み込まれた車両の違いが分かります。

2次車~4次車の組み込み後、編成は6両編成12本、3両編成9本となりました。6両化はグリーン車が0番台の編成を中心に行われた為、6両編成のグリーン車は0番台が11本、100番台が1本となり、3両編成のグリーン車は9本すべてが100番台でした。

特急として一般的な内装になった増備車200番台と既存車の改造

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リクライニングシートの並ぶ200番台の車内

2002年日韓ワールドカップに合わせ、輸送力増強の為に5次車として6両編成2本が増備されました。5次車は内装や台車の違いから200番台に区分されています。

当時すでに新車はVVVFインバーター制御が標準になり、253系の設計は旧式化していましたが、既存車に性能を合わせる為、界磁添加励磁制御を採用することになり、走行機器は205系通勤電車のVVVFインバーター制御化の際に外されたものを流用しました。

グリーン車開放室は1+2列配置で、シートピッチは0番台に合わせた1090mmとなり、開放室の定員は28人に増加しました。

普通車はボックスシートから回転式リクライニングシートに変更され、2+2列配置・シートピッチ1020mmで設置されました。シートピッチは普通車としては広めですが、既存車のボックスシートのシートピッチが2040mmである為、座席数を揃え、また窓割に合わせることができました。

200番台の好評を受け既存車にはリニューアルが行われました。グリーン車は6両編成11本を200番台に準じた仕様に改装、3両編成9本は開放室部分を普通席に格下げし、200番台普通席に準じて2+2列で回転式リクライニングシートを配置しました。普通車はボックスシートを再利用し、シートピッチ1020mmで集団見合い型に固定配置、座席背面にはテーブルが設置されました。構造上リクライニングは出来ず、また常に半分は後ろ向きとなりました。

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集団見合い型配置へ改造後の253系車内 客室中央部では向かい合わせとなり、ボックスシート時代の面影を留める 下のスペースが空いた片持ち式のシートや本来表に出ることを想定していない座席背面、そこに後付けされたテーブルもよくわかる画像

後継車E259系の登場・登場から20年で多くが廃車に

2010年7月17日、京成電鉄の成田空港線(成田スカイアクセス線)開業と、新型スカイライナーAE型の160km/h運転により、所要時間が大幅に短縮されることになります。それを前にして、JR東日本では京成電鉄への対抗上、成田エクスプレスに新型車を投入することになり、E259系が登場しました。

E259系ではグリーン車の個室は廃止され、開放室はJR東日本特急用車両として標準の2+2列配置・シートピッチ1160mmとなりました。2+2列配置になりましたが、シートピッチは253系より広くなりました。普通車は回転式リクライニングシートの2+2列配置で、シートピッチは253系に合わせた1020mmとし、960mmが標準となっていた他のJR東日本特急用車両より広くなっています。座席のリクライニングと回転機構が導入されたことで、200番台と格下げ車を除きリクライニングができず、集団見合い型配置だった253系より快適性が向上しました。

E259系は2009年10月1日に運転開始、2010年7月1日には全列車がE259系に置き換えられました。運用を失った253系は、経年の若い200番台6両編成2本を東武鉄道直通用に改造、3両編成2本を長野電鉄に譲渡し、他は廃車解体となります。増結車の4次車は経年13年、1次車でも経年20年で、より旧型の189系や185系も残存する中での廃車でした。

東武鉄道直通特急用の改造車 253系1000番台

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253系1000番台 外観の変化だけでなく走行機器も変更された

253系200番台は大改造を受け1000番台へ改番、JR東武直通特急「日光」「きぬがわ」に投入され、485系を置き換えます。初期車に合わせ、中古品を搭載していた走行機器を変更し、VVVFインバーター制御化されました。前面の貫通路は塞がれ、LEDヘッドマークを設置、塗装も変更され、外観は大きく変わっています。東武鉄道乗り入れに対応した保安装置の搭載もなされました。

客室は6両全車が普通車とされ、グリーン個室の跡は車販準備室に改造されました。相互直通する東武スペーシアに合わせて2+2列配置・シートピッチ1100mmで回転式リクライニングシートが並べられましたが、これにより窓割が合わなくなっています。荷物置き場の一部は客室やパウダーコーナーに改造されました。ちなみに東武スペーシアには普通席と個室が設定されていましたが、253系は485系と同様に個室は設定されませんでした。

2023年3月18日ダイヤ改正以降、定期「日光」は東武スペーシアで運転される「スペーシア日光」のみとなり、253系は臨時「日光」での運転となりました。これにより、253系の定期運用は「きぬがわ」のみとなっています。

長野電鉄では個室も健在 スノーモンキー2100系

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長野電鉄オリジナル塗装の2100系第2編成 赤と白を基調にした塗装で元のイメージを残しつつオリジナリティを出している 第1編成はほぼ成田エクスプレス塗装のまま活躍

長野電鉄に譲渡された3両編成2本は2100系と附番され、2011年2月26日よりA・B特急運用に就きました。地獄谷野猿公苑の温泉に入る猿をイメージした「スノーモンキー」の愛称が与えられ、第1編成は成田エクスプレス塗装のまま(ロゴなどは変更)、第2編成は長野電鉄オリジナル塗装で活躍しています。特徴的な内装もJRを引退した当時のままで、個室席は「Spa猿~ん」と命名され販売されています。長野電鉄A特急に指定席が導入されてからは、回転式リクライニングシートを装備した元グリーン車格下げの普通席が指定席に充てられています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は「253系」について解説しました。

片持ち式のボックスシートを採用し、手荷物を座席下や背もたれ間に置くことができる空港特急らしい車両でしたが、シートピッチが広めとはいえ特急でボックスシートは不評で、集団見合い型に改造されました。増備車や後継車では通常のリクライニングシートが採用されたことからも、特急にボックスシートは向かないと判断されたことが分かります。

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。

参考文献

国鉄・JR悲運の車両たち 名車になりきれなかった車両列伝 寺本光照 JTBパブリッシング

残念な鉄道車両たち 池口英司 イカロス出版

きぬがわ(253系) – JR東日本

Wikipedia

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