1950年代の空飛ぶクルマ「エアロカー」 わずか5分で車が飛行機に変形!

航空機
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こんにちは!今回は「エアロカー」について解説します。

「空飛ぶクルマ」は1950年代に実現していた!

昨今、実用化が近いと報じられている「空飛ぶクルマ」は、「車のような身近な移動手段となる航空機」の意味でそう呼ばれています。見た目はヘリコプターのようで、車には見えませんし、道路を走ることはできません。しかし、「空飛ぶクルマ」と言うと道路走行も飛行もできる空陸両用の乗り物をイメージする方も多いでしょう。

わずか5分で車から飛行機へ、飛行機から車へ変形でき、道路走行も出来て飛行も出来る。SF映画のような夢のマシンは1950年代のアメリカにありました。

発明家モールトン・テイラーの夢

Alan Wilson from Peterborough, Cambs, UK, CC BY-SA 2.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0, ウィキメディア・コモンズ経由で
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ロバート・エジソン・フルトン・ジュニアの「エアフィビアン」 コクピットは道路を走れるが、機体後部は空港に置いてくるしかない

1946年、アメリカの発明家モールトン・テイラーは空飛ぶクルマ「エアフィビアン」の設計者として知られるロバート・エジソン・フルトン・ジュニアとの出会いをきっかけに空飛ぶクルマの開発を始めます。「エアフィビアン」は軽飛行機のコックピット部分が分離して車になるもので、初めて民間航空局に認証された空飛ぶクルマです。しかし「エアフィビアン」の後ろ部分は道路を走れないので空港に置いておくしかなく、また機首のプロペラも取り外す必要がありました。モールトン・テイラーはエアフィビアンと異なり、飛行機全体が道路を走行でき、簡単に車から飛行機へ、飛行機から車へ変形できる実用的な空飛ぶクルマ「エアロカー」の開発に挑みました。

1948年2月、モールトン・テイラーは「エアロカー」の開発・製造・販売を行うエアロカーインターナショナル社を設立しました。設計図を基に1/4模型を製作、風洞試験をワシントン州立大学に依頼しています。1948年7月には1号機の制作に着手し、翌1949年10月に完成、1950年に初飛行しました。この最初のモデルはエアロカーⅠと呼ばれています。

空陸両用車としての高い実用性を備えたエアロカーの仕組み

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飛行機モードのエアロカーⅠ この機体は現在唯一飛行可能なエアロカーです

エアロカーは車ユニットと後部胴体ユニットで構成されています。後部胴体ユニットには折り畳み式主翼、Y字型尾翼、推進式プロペラを備えています。

車モードから飛行機モードにする際は車ユニットと後部胴体ユニットを接続し折り畳み式の主翼を展開します。飛行機モードから車モードへは逆の手順で可能です。変形は一人で可能で、所要時間は約5分です。安全装置を備えており、主翼や後部胴体が適切に接続されるまでエンジンが始動できないようになっています。

エンジンは飛行・走行兼用のライカミングO-320レシプロエンジン(143馬力)を車ユニット後部に搭載しています。走行時は3速マニュアルトランスミッションを介して前輪を駆動、飛行時はリアナンバープレートを跳ね上げて、車ユニットと後部胴体ユニットのシャフトを接続、道路走行用トランスミッションをニュートラルにして推進式プロペラを駆動しました。飛行機モードで地上で後退する際に走行用のリバースギアを用いることも可能でした。

後部胴体ユニットは移動用の車輪とテールライト、ナンバープレートといった公道走行に必要な装備一式を持っています。その為、主翼をたためばトレーラーとして車ユニットで牽引可能でした。トレーラーとしての牽引時は飛行機モードとは逆向きに連結します。推進式プロペラの採用により、プロペラを取り外す必要もありません。もちろん後部胴体ユニットを牽引せず、車ユニット単体での走行も可能です。

車モードと飛行機モードで共用の車輪は4輪で、脚柱に取り付けられています。固定式で、引き込むことはできませんでした。

定員は走行時・飛行時共に2名です。

Valder137, CC BY 2.0 https://creativecommons.org/licenses/by/2.0, ウィキメディア・コモンズ経由で
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折りたたんだ状態のエアロカーⅠ後部胴体ユニット 車ユニットにトレーラーとして牽引され走行できる 走行用の車輪やテールライト、ナンバープレートといった公道走行に必要な装備一式を持つ

エアロカーの量産計画と改良型の開発

エアロカーⅠは1956年12月に民間航空局の型式証明を得ました。1961年にはエアロカー量産の為に、販売価格8500ドルで500台の注文を条件にリング・テムコ・ヴォート社と製造契約を結びましたが、半分程の注文しか集まらず頓挫しました。最終的にエアロカーⅠは5機が製造されました。

1964年にはエアロカーⅡ(エアロカーエアロプレーン)が初飛行しました。これはエアロカーⅠの後部胴体ユニットに新設計のグラスファイバー製キャビンを組み合わせた軽飛行機で、空陸両用ではなく公道走行はできませんでしたが、定員は4名に増加しました。1機のみが製造されました。

1968年6月にはエアロカーⅢが初飛行しました。エアロカーⅢは道路での事故で車ユニットを損傷したエアロカーⅠを買い戻し、後部胴体ユニットに新設計の車ユニットを組み合わせる形で1機のみ制作されました。新設計の車ユニットは、ジャガーEタイプからインスピレーションを得た洗練されたスポーティーなデザインとなり、車モードではタイヤは普通の車のように見えますが、離着陸時には脚柱を伸ばし、飛行中は車輪を完全に引き込むことができる3段階の可動が出来る構造とし、飛行速度を向上させています。 販売価格は10000ドルの予定でした。1970年にはフォードの社長の目に留まり、調査も行われましたが、強化された安全基準や排ガス基準を満たすための改良の費用とそれに伴う重量増加の問題もあり、量産に至りませんでした。

Ciar, CC BY-SA 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0, ウィキメディア・コモンズ経由で
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アイキャッチ画像と同じエアロカーⅢ 主翼を展開途中の状態で展示されている為、そのギミックがよくわかる

エアロカーインターナショナル社はエアロカーだけでなく組み立てキット航空機を手掛けました。1969年に初飛行した単発水上機クートは70機が販売されました。また、70~80年代には軽量スポーツ飛行機のIMPファミリーも開発販売しました。

1987年にはホンダCRXをベースとしたエアロカーCRXの計画が発表されました。小型ターボシャフトエンジンの実用化により走行用エンジンと飛行用エンジンを別々に搭載、走行はホンダのレシプロエンジン、飛行はターボシャフトエンジンで行う設計となりました。ホンダCRXは別売りで、飛行用エンジン・改造パーツ・図面がセットのコンバージョンキットを15万ドルで売り出す計画でしたが、販売されることはなく、実機も制作されませんでした。

製造されたエアロカーⅠ/Ⅱ/Ⅲは6機とも現存し、エアロカーⅠの1機は現在でも飛行可能です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は「エアロカー」について解説しました。

発明家モールトン・テイラーが1950年代に開発した「空飛ぶクルマ」であるエアロカーは、5分で車モードと飛行機モードを切り替えることができました。先行していたエアフィビアンが飛行機のコックピットのみが道路走行可能となるのに対し、エアロカーは飛行機の機体全体が道路走行可能となるものでした。民間航空局の認証を得ることはできましたが、注文が集まらず量産計画が頓挫します。モールトン・テイラーはその後も空飛ぶ車の開発を続けますが、量産に至ることはありませんでした。しかし、エアロカーは正に道路走行も飛行も出来る「空飛ぶクルマ」を実現したものだったのです。

エアロカーは私たちのイメージする空を飛べるし道路も走れる「空飛ぶクルマ」に近いものだったのではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。

参考文献

世界の珍飛行機図鑑 西村直紀 グリーンアロー出版社

世界の「最悪」航空機大全 ジム・ウィンチェスター 松崎豊一訳 原書房

Wikipedia英語版

The Taylor Aerocar : History of Flying Car MOTORTREND

The Story Of The Taylor Aerocar Simple Flying

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