カナディアCL-44/コンロイ・スカイモンスター スイング・テールで長尺貨物も搭載!

航空機
RuthAS, CC BY 3.0 , ウィキメディア・コモンズ経由で https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Canadair_CL-44_N228SW_BOAC_RWY_09.63_edited-3.jpg

こんにちは!今回は「カナディアCL-44」とその派生機「コンロイ・スカイモンスター」について解説します。

ブリストル・ブリタニアのライセンス生産

1954年、カナダのカナディア社はイギリスのブリストル社のターボプロップ旅客機「ブリタニア」を製造するライセンスを取得しました。カナディアはライセンスによってブリタニアをベースとした哨戒機「CP-107アーガス」を開発、1957年3月27日に初飛行、翌年より就役しました。

また、カナダ空軍は輸送機「カナディア・ノーススター」(DC-4を改良したライセンス生産機)に代わる新たな輸送機を求めていました。カナダ空軍と契約したカナディアは、ブリタニアをベースとした輸送機「CC-106ユーコン」を開発、1959年11月16日に初飛行し、翌年より就役しました。

CC-106ユーコンは空軍の呼称で、カナディアではこの機体を「CL-44」と呼んでいました。カナダ空軍向けのはCL-44-6となります。

RuthAS, CC BY 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by/3.0, ウィキメディア・コモンズ経由で
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カナダ軍のCC-106ユーコン スイング・テールは備えていない

スイング・テールを備えた民間貨物型 CL-44D4

カナディアはCL-44を民間にも販売しようとしましたが、既にジェット機の時代となっていた為に、旅客機としては航空会社の関心を集めることはできませんでした。しかし、貨物機としては燃費が良いことから収益性の高い機体でした。民間貨物型は荷物の積み下ろし作業にかかる時間を短縮する為、尾部が折れ曲がるスイング・テール方式を採用しました。この派生型がCL-44D4です。

スイング・テール方式は保管スペースを節約する為に海軍機で採用した前例がありましたが、大型機としてはCL-44D4が初となりました。スイング・テール方式の採用により、大型貨物や長尺貨物の搭載が可能となりました。尾部の開閉の為に、右側に胴体から張り出した2つのヒンジが設けられ、垂直尾翼前縁に油圧シリンダーが設けられました。開閉にかかる時間は90秒でした。

カナディアは専用の貨物ローダーも開発しました。貨物の積み下ろし作業は45分で完了し、60分以内でターンアラウンドできました。

Ralf Manteufel (GFDL 1.2 http://www.gnu.org/licenses/old-licenses/fdl-1.2.html または GFDL 1.2 http://www.gnu.org/licenses/old-licenses/fdl-1.2.html), ウィキメディア・コモンズ経由で
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CL-44D4 右側から見るとスイング・テールのヒンジが張り出しているのが分かる

胴体を延長した旅客型 CL-44J

アイスランドの航空会社ロフトレイジルは、カナディアが持っていた4機の在庫のCL-44D4を購入しました。ひとまず旅客機仕様に改造されて納入されましたが、ロフトレイジルは胴体を延長し定員を増やすことを購入の条件としていました。カナディアは要求に応える為に研究を行い、胴体主翼前方で3.07m、主翼後方で1.55m延長、定員は160名から189名に増えました。このタイプはCL-44Jと呼ばれ、1965年11月8日に初飛行しました。4機全機がこの仕様に改造されています。

最大離陸重量は据え置かれ、胴体延長に伴う重量増加には中央翼内の燃料タンクを取り外して対応しました。その為、航続距離は短くなりました。

旅客機に改造後も後部のスイング・テールは残されており、ヒンジが確認できます。ロフトレイジルからの退役後、貨物機に再改造し運用された機体ではスイング・テールが使用されました。

Udo Haafke (GFDL 1.2 http://www.gnu.org/licenses/old-licenses/fdl-1.2.html または GFDL 1.2 http://www.gnu.org/licenses/old-licenses/fdl-1.2.html), ウィキメディア・コモンズ経由で
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貨物機になったCL-44J 長い胴体、スイング・テールといった特徴が確認できる

大型貨物も運べるコンロイ・スカイモンスター

1960年代後半、ロッキード社のジェット旅客機「トライスター」の製造の為、同機に搭載する3基のロールスロイスRB.211エンジンを、北アイルランドのベルファストからアメリカのカルフォルニア州パームデールへ輸送することができる機体が求められました。

アメリカのコンロイエアクラフト社の創業者ジョン・M・コンロイは、これに応えてCL-44の胴体を太く改造した「スカイモンスター」を設計しました。その巨体は正に「空の怪物」と言えます。スカイモンスターは1969年11月26日に初飛行しました。2号機の改造計画もありましたが、実際に改造されたのは1機のみでした。

ジョン・M・コンロイはコンロイエアクラフト社の設立以前、エアロスペースラインズ社でボーイング377の胴体を太く改造した「プレグナント・グッピー」、「スーパーグッピー」、「ミニグッピー」を設計していたことでも知られています。また、スカイモンスターも「CL-44グッピー」と呼ばれることがあります。

Udo Haafke (GFDL 1.2 http://www.gnu.org/licenses/old-licenses/fdl-1.2.html または GFDL 1.2 http://www.gnu.org/licenses/old-licenses/fdl-1.2.html), ウィキメディア・コモンズ経由で
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Conroy_Skymonster.jpg
コンロイ・スカイモンスター 太い胴体に改造することによって大型旅客機のジェットエンジンの空輸を可能にした

製造数と現存機

カナディアは空軍向けのCC-106を12機、民間向けのCL-44D4を27機、計39機を製造しました。

前述したようにCL-44D4のうち、4機は胴体延長型のCL-44Jに、1機はスカイモンスターに改造されました。

製造された39機のうち、現存するのは2機(シリアルナンバー13番、16番)のみです。それぞれCC-106とスカイモンスターで、CL-44-D4は1機も残っていません。CL-44-D4は2機(シリアルナンバー32番、37番)が最後まで残されていましたが、37番が2008年に、32番が2009年に解体され、姿を消しました。また、CL-44Jは最後の1機(シリアルナンバー35番)が1992年に解体されました。

CC-106(シリアルナンバー13番)は、2009年に解体され、再組み立ての上でエクアドルのクエンカでナイトクラブとして使用されています。解体される以前、カナダに里帰りさせて博物館に保存する計画もありましたが、資金不足により実現しませんでした。

スカイモンスター(シリアルナンバー16番)は、2002年よりイギリスのボーンマス空港で保管されています。再就役や博物館での保存計画も複数ありましたが、いずれも実現しておらず、保管状態となっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は今回は「カナディアCL-44」とその派生機「コンロイ・スカイモンスター」について解説しました。

イギリスのターボプロップ旅客機「ブリストル・ブリタニア」をカナダのカナディア社が改良したCL-44。カナダ空軍の輸送機として開発されましたが、民間向けにも販売されました。民間市場では旅客機がジェット機の時代になる中で、燃費の良さと長尺貨物の搭載が可能なスイング・テールにより、貨物機として活躍しました。定員を増やしたCL-44Jや、大型貨物を搭載可能なコンロイスカイモンスターといった改造機も登場し、製造数は少ないながらも、幅広く活躍した機体です。

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。

参考文献

続世界の珍飛行機図鑑 西村直紀 グリーンアロー出版社

CL-44.com

Based On The Bristol Britannia: The Story Of The Canadair CL-44 Simple Flying

Wikipedia英語版

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