ガルウィングドアの軽自動車 マツダ・オートザムAZ-1 バブルが生んだ珍車

自動車
Taisyo, CC BY-SA 3.0 , ウィキメディア・コモンズ経由で https://commons.wikimedia.org/wiki/File:MAZDA_AZ-1.JPG

こんにちは!今回はマツダ・オートザム「AZ-1」について解説します。バブル期に開発された車は個性的な車が多いですね。

3台のコンセプトカー

1989年、マツダは東京モーターショーにコンセプトカー「AZ550 SPORTS」を出展しました。AZ550 SPORTSはタイプA、タイプB、タイプCの3台が用意され、タイプAはガルウィングドアとリトラクタブルヘッドライトを備えたスーパーカー風、タイプBは走りに徹したスポーツクーペ、タイプCはグループCレーシングカーをデフォルメしたデザインでした。後述する構造により、それぞれの外装は着せ替え可能でした。

このAZ550 SPORTSを市販化したのがAZ-1です。市販車はタイプAがベースとなりましたが、ヘッドライトはリトラクタブルから丸目の固定式に変更されました。また、1990年1月の軽自動車規格改定により排気量が550ccから660ccになったことを受けて、エンジン排気量は660ccとなっています。

開発当時はバブル期でしたが、発売はバブル崩壊後の1992年10月になりました。「オートザム」は当時のマツダの販売チャンネルの1つです。

AZ-1の設計

Tobias ToMar Maier, CC BY-SA 3.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0, ウィキメディア・コモンズ経由で
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Autozam_AZ-1_at_the_Mazda-Museum_Augsburg_-_Front_one_quarter_view_with_open_doors.jpg
ドイツのマツダミュージアムに展示されているAZ-1 マツダスピード製のエアロパーツを装着

AZ-1は2人乗りの軽スポーツカーです。駆動方式はミッドシップに搭載したエンジンで後輪を駆動するMR方式を採用しました。

車重・前後重量配分

軽量化により車重は720kg。前後重量配分は空車時42:58、2名乗車時44:56となっています。

スケルトンモノコックボディ

外板に強度を依存しないスケルトンモノコックボディフレームを採用し、構造上は外板無しでも走行可能でした。外板はFRP製で、軽量化と成形自由度を実現しました。外板を付け替える「着せ替え」が可能な設計でしたが、タイプBやタイプCのボディが発売されることはありませんでした。同様の着せ替えは後に2代目ダイハツ・コペンで実現しています。

サイドシルは車体剛性と側面衝突安全性を確保する為に太くなっていました。

ガルウィングドア

軽自動車で唯一の採用となるガルウィングドアはスタイリング上の理由だけでなく、サイドシルが太いことから乗降性を確保する目的もありました。

ドアの重さは1枚23kgで、ダンパーで支えられ外気温-20度から40度で開閉可能でしたが、冬は軽くなり夏は重くなりました。

また、横転時は構造上ドアが開かなくなる為、備え付けのハンマーでガラスを割って脱出することとして認証を受けました。

アルトワークスと共通の主要部品

エンジンやトランスミッション、サスペンション等はスズキ・アルトワークスと共通でした。エンジンはF6A、直列3気筒DOHCインタークーラーターボで軽自動車の自主規制上限となる64馬力を発揮しました。トランスミッションは5速MTのみで、ATは設定されませんでした。

ハンドリング

ステアリングはギア比12.2:1、ロックトゥロック2.2回転でした。カート感覚のハンドリングの楽しさを目指して、クイックなハンドリングとしました。「究極のハンドリングマシン」の異名も付きました。

兄弟車キャラと平成ABCトリオ

TTTNIS, CC0, ウィキメディア・コモンズ経由で
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Suzuki_Cara.jpg
OEM車のスズキ・キャラ エンブレムがスズキになっている他、フォグランプが標準装備されている

アルトワークスと共通の主要部品を使用していたAZ-1は、スズキにOEM供給され「キャラ」として販売されています。

1990年代前半には他社からも軽スポーツカーが発売されました。AZ-1とホンダ「ビート」、スズキ「カプチーノ」を合わせて「平成ABCトリオ」と呼ばれました。

AZ-1は平成ABCトリオの中でも生産期間最短・生産数最少で、1995年に販売を終了、生産数はAZ-1が4409台、キャラが531台となっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はマツダ・オートザム「AZ-1」について解説しました。

平成ABCトリオの「A」であるAZ-1。ガルウイングドアを備えたミッドシップ車と、まさに「軽のスーパーカー」となったAZ-1でしたが、バブル崩壊の影響を受け販売は伸びませんでした。しかし、その個性と魅力から現在でもファンの多い車です。

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。

参考文献

ざんねんなクルマ事典 片岡英明 ベストカー編集部 講談社ビーシー

マツダオートザムAZ-1 市販の奇跡 なんでこんなクルマ出せたんだ?? – 自動車情報誌「ベストカー」

「バブルの申し子」オートザムAZ-1。ミッドシップ&ガルウイングの小さなスポーツカー…語り継がれる希少車|クルマ情報サイト-GAZOO.com

【東京モーターショーにコンセプトカーとして発表されたあのクルマたち】軽スポーツの真骨頂。太いサイドシルとガルウイングドアはまさにスーパーカーだ|クルマ情報サイト-GAZOO.com

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