こんにちは!今回は世界初の実用的潜水艦であるフルトンのノーチラス号について解説します。ノーチラス号と言うとSF作家ジュール・ヴェルヌの小説「海底二万里」(1870年)に登場する潜水艦として広く知られています。また、同作を原案とした日本のテレビアニメ「ふしぎの海のナディア」(1990年)を思い浮かべる方も多いでしょう。実は「海底二万里」の潜水艦の名前は、このフルトンのノーチラス号にちなんだ命名です。さて、フルトンのノーチラス号はどんな潜水艦だったのでしょうか。
船舶史の重要人物 ロバート・フルトン
アメリカ人発明家・実業家のロバート・フルトンは初めて商業的に成功した蒸気船を作ったことで知られていますが、世界初の実用的な潜水艦を作った人物でもあります。
1800年、当時フランス在住だったフルトンは、フランス海軍向けに潜水艦ノーチラス号を建造しました。艦名は「オウムガイ」という意味です。
人力の潜水艦 構造と運用方法
ノーチラス号は全長6.48m、全幅1.93mで、船体は鉄製フレームに銅板を張った構造になっていました。前方上部には観測ドームと革製のシュノーケルが設置されています。中空構造の竜骨はバラストタンクを兼ねており、内部に水を満たして潜水しました。後端にはスクリュー、その下部には上下方向用と左右方向用の舵が設置されました。観測ドーム後方には折り畳み可能な扇形の帆を備えており、水上では帆走、水中では人力でスクリューを回して推進しました。
戦い方は敵艦の船底にスパイクを打ち込み、スパイクの穴を通るワイヤーで繋がれた機雷を放出、ノーチラス号は全速力で退避し、ワイヤーが伸びきった瞬間に敵艦の船底で機雷が爆発、撃沈するという方法でした。
1800年7月29日よりセーヌ川で実験が始まり、その後ルアーヴル港に移って実験が続けられました。速度試験や、潜航可能時間の試験が実施された他、標的艦の撃沈にも成功しました。しかし、フランス海軍は乗組員が危険すぎるとして不採用とし、ノーチラス号は解体処分されました。
フルトンと潜水艦のその後
その後、1804年にフルトンはイギリスに移住しました。イギリス海軍からフルトンに潜水艦を開発して欲しいとの申し出がありましたが、トラファルガーの海戦(1805年)でのイギリスの勝利によって潜水艦は不要となり、建造されませんでした。フルトンは1806年にアメリカに帰国、翌年に蒸気船クラーモント号を建造し、ハドソン川で運航を開始、初の商業的に成功した蒸気船の開発者として知られることになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はフルトンの「ノーチラス号」について解説しました。
世界初の実用的潜水艦となったフルトンのノーチラス号は、水上では帆走、水中では人力でスクリューを回して推進しました。標的艦を沈める実験は成功しましたが、乗員が危険にさらされることから海軍は実用化しませんでした。余談になりますが、アメリカにはロバートフルトンにちなんで名付けられた町が多くあります。旅行された際に見つけてみるのも面白いかもしれません。
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参考文献
図説世界史を変えた50の船 イアン・グラハム 角敦子訳 原書房
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