こんにちは!今回は黎明期の軽自動車の一つ、NJ号について解説します。NJ号はその後車名と製造メーカーが2度も変わる波瀾万丈の歴史をたどることになります。どのように変化していったのでしょうか?そして、実車は現存しているのでしょうか?一緒に見ていきましょう。
初期の軽自動車
1951年、史上初の軽四輪車となる中野自動車工業オートサンダルが登場しました。1950年代にはオートサンダルを追うように様々なメーカーから軽自動車が発売されています。日本自動車工業NJ号はそのような初期の軽自動車の一つです。NJ号はその後、メーカーや車名を変えながら生産されていくことになります。
日本自動車工業NJ号
1953年、横浜市の日本自動車工業株式会社が製造、輸入車ディーラーの日本自動車株式会社が販売する形でNJ号が発売、車名は社名のイニシャルから採られました。
NJ号は2人乗りのオープンカーで、搭載エンジンVA1型は空冷4サイクルOHV V型2気筒358cc、12馬力に3速マニュアルトランスミッションを組み合わせています。駆動方式はRRで最高速度は70km/hでした。ボディは職人の手造りで、モノコック構造を採用しています。サスペンションは四輪独立懸架を採用し、当時としては先進的な設計でした。
当時小口運搬を担っていたオートバイやスクーターの代替需要に応え、ボンネットにトランクスペース、リアのエンジンフードにはキャリアが設けられました。キャッチコピーも「国情に最も適応した画期的乗貨車」とされ、積載能力を重視していたことが分かります。
日本自動車工業では1954年5月までに約80台が生産されました。
日本軽自動車への移管とモデルチェンジ、ニッケイタローへの改名
1955年からNJ号は埼玉県川口の日本軽自動車で生産されるようになります。日本軽自動車に関しては日本自動車工業が移転・社名変更をしたとも、日本自動車工業から生産を引き継いだ会社とも言われています。
1956年、NJ号はモデルチェンジをします。ボディはより直線的なデザインになり、車体をモノコック構造からフレーム構造に変更、駆動方式はFRに変更されました。搭載エンジンはVA1型の改良型VA5型、出力はVA1型と同じく12馬力でトランスミッションはフロアシフト・4速マニュアルトランスミッションを組み合わせ、最高速度は72km/hです。折り畳み可能な後部座席が設けられた2ドア4人乗りロードスターPA-1と2人乗りピックアップTA-1型が展開されました。
モデルチェンジから遅れて1956年中に「ニッケイタロー」に改名されます。日軽(日本軽自動車)太郎の意味です。3人乗り(3人目は折り畳みシート)ライトバンLA-1型も追加されました。
「国民のみんなが待っていた国民車」のキャッチコピーで発売され、価格はピックアップが35万5000円、ロードスター・ライトバンが共に39万5000円でした。
1956年に108台、1957年は49台を生産しましたが、1957年6月に日本軽自動車は操業停止しています。
日建機械工業コンスタックへ
日本軽自動車の操業停止後、エンジンを製造していた日建機械工業が改良と「コンスタック」へ改名し、生産を引き継ぎました。
コンスタックはトラックCT型とライトバンCL型の2種類がラインナップされ、NJ号以来のロードスターは生産終了となっています。また、ニッケイタローではキャビンと荷台が一体となったピックアップでしたが、コンスタックではキャビンと荷台が別になったトラックに変更されています。ライトバンは後期型になるとリアクオーターウインドウが設けられました。キャッチコピーは「手軽に買えて気軽に乗れる乗り心地の良い経済車」でした。1958年に発売され、1961年に生産終了しました。生産台数は100台前後(諸説あり)とされ、末期は受注生産になっていました。
この日建機械工業は現在も存続している会社です。
現存車
モデルチェンジ前のNJ号は数台の現存例がありますが、モデルチェンジ後のNJ号・ニッケイタロー・コンスタックの現存例の情報はありませんでした。福岡県久留米市の自動車博物館セピアコレクション所蔵車は公道走行可能な唯一のNJ号です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「NJ号」について解説しました。
最初期の軽自動車の一つであるNJ号は製造メーカーが2度も変わり、それに伴い車名も2度改名しました。尚、1度目の改名は生産移管のタイミングとも、翌年のモデルチェンジのタイミングともずれ、遅れて改名されています。その為、1.日本自動車工業NJ号(RR車)、2.日本軽自動車NJ号(RR車)、3.日本軽自動車NJ号(FR車)、4.日本軽自動車ニッケイタロー(FR車)、5.日建機械工業コンスタック(FR車)と5種類の組み合わせがあります。2代目モデルの現存車は確認されていませんが、発見されるといいですね。
初期の軽自動車は、とてもかわいらしく、デザインも個性的なものが多いですね。庶民が自家用車を所有することを夢見た時代、様々な会社が開発に参入し、制作されました。そして、軽自動車は広く国民に浸透していきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。
参考文献
懐かしの軽自動車 中沖満 グランプリ出版
カタログで楽しむ360ccの時代 日本の軽自動車 小関和夫 三樹書房
60年代街角で見たクルマたち 日本車・珍車編 浅井貞彦・高島鎮夫 三樹書房
NJ号、ニッケイタロー、コンスタックの各カタログ
セピアコレクション 博物館の名車
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