展望席初登場!「特急専用車」小田急ロマンスカー1700形

鉄道
Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Odakyu_1700.JPG

こんにちは!今回は小田急ロマンスカー1700形について解説します。

特急専用として快適性を向上

小田急初の特急車として登場したのは2000形(登場時は1910形)ですが、当時は車両が足りず輸送力が不足していた為、特急運用だけでなく、通勤運用も予備車の扱いでしたが担っていました。その為、設備も2ドアセミクロスシートで、特急としては見劣りするものでした。

1950年8月1日、小田急ロマンスカーが箱根登山鉄道の箱根湯本まで乗り入れるようになると、乗客が急増しました。その為、特急券が買いづらい状況になりました。この頃には車両不足も改善されてきたので、小田急は全席転換クロスシートとして快適性を向上させた特急専用車を導入することにしました。

経理状況から新規投資が難しい状況の中、特急専用車は通勤車と比べ1日に使用する時間が短いことが問題になりました。しかし、特急には特急料金の収入があること、2000形を通勤運用に転用できることから導入が決まりました。1700形は新造ではなく台枠を流用した戦災復旧車として3両編成2本が導入されます。

1951年2月より第1編成が運転開始、同年8月には第2編成も運転開始しました。第2編成導入と同時に号車定員制から座席指定制に移行しています。

1700形の設計

編成はデハ1700形(制御電動車)-サハ1750形(付随車)-デハ1700形(制御電動車)の3両編成です。

制御電動車は車体重量の問題から車体長を短く、付随車は定員確保の為に車体長を長くしたため電動車は16870mm、付随車は20000mmと不揃いでしたが、車体幅は台枠流用の関係で不揃いだった2000形と異なり2863mmに揃えられました。

ドアは両先頭車の中間車よりに片側1箇所とし、中間車にはドアはありませんが、非常時の退避を考慮し非常口を車端部対角線上に設けています。ドアを少なくしたのは座席数を増やして定員を確保する為で、通勤運用に入らず特急専用で運用されることから実現しました。

走る喫茶室のサービスカウンターは中間車の車体中央に設けられ、スペースも広くなっています。

ロマンスカーの売りの一つに展望席があります。2000形の運転席後方はロングシートでしたが、全席転換クロスシートとなった1700形では最前列で運転席越しに前面展望が楽しめるようになりました。運転席を2階に上げるのは1963年の3100形NSE車からになります。

制御電動車の台車は乗り心地の観点から1600形からKS33L台車を転用し、1600形には代わりに国電に使われていたTR25台車を装備しました。付随車の台車は第1編成がMD-5台車、第2編成がTR23となっています。

改良型の第三編成

1700形導入後も多客期には2000形が特急運用に入りましたが、設備面の格差が大きいことから1700形の増備が決まりました。1952年8月に第3編成が登場、第1・2編成と異なり完全新造車で、設計にもいくつかの改良点がありました。

先頭は非貫通の2枚窓になり、屋根も張り上げ屋根となり外観は大きく変わりました。台車は制御電動車・付随車共に、新造のFS108台車を採用したことで乗り心地が向上しています。汽笛も複音汽笛となり、やわらかい音色になりました。内装も変更され、照明は白熱灯から蛍光灯に、不燃化の為天井はベニヤ板からアルミ板に変更されました。運転席と客席を仕切る壁に設けられた窓の幅も拡大され、より前面展望が楽しめるようになりました。

FS108台車は第1・2編成にも装備され、KS33L台車は1600形へ戻されました。

新型車の登場とその後の1700形

さらなる乗客増加を受け1700形第4編成の新造も計画されましたが、既にカルダン駆動車が登場している中で、吊り掛け駆動方式の1700形の増備は見送られ、1955年に2300形が登場しました。すでに開発が始まっていた3000形SE車登場までのつなぎとして1編成のみが製造され、1700形と併用されました。 

1957年、3000形SE車の登場を受け、1700形は格下げされ3ドアロングシート車に改造されました。他の通勤車と編成を合わせる為、中間車の全長を17300mmへ短縮する大改造が行われ、さらに新造の中間車を1両加えて4両編成を組みました。第3編成は1962年に先頭車を貫通型に改造しています。

その後、1974年に廃車され、主電動機は4000形に流用されました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は「小田急ロマンスカー1700形」について解説しました。

小田急初の特急専用車であり、運転席越しとはいえロマンスカーの象徴である展望席を備えた1700形は、ロマンスカーの歴史においても重要な車両と言えます。

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。

参考文献

小田急ロマンスカー 生方良雄・諸川久 JTBパブリッシング

小田急電鉄の車両 大畑哲海 JTBパブリッシング

日本のパノラマ展望車 徳田耕一 JTBパブリッシング

Wikipedia

タイトルとURLをコピーしました