特急時代はわずか4年小田急ロマンスカー2300形準特急用・通勤用と2度の格下げ改造を受ける

こんにちは！今回は小田急ロマンスカー2300形について解説します。

繋ぎのロマンスカー
2300形の設計
2300形の運用
富士急での活躍
まとめ
参考文献

繋ぎのロマンスカー

1954年頃、小田急では箱根特急の好調を受け、営業部門から特急車増備の要望が出ていました。当時特急車として用いられていた1700形の増備は、既にカルダン駆動車が登場している中で、旧式化した吊り掛け駆動方式であることから見送られます。既に後継の3000形SE車の開発が始まっていましたが、実用化にはまだ時間がかかります。そこで、繋ぎの車両として当時最新の通勤車であった2200形の設計をベースに特急車の設備を持つ車両として2300形が導入されました。2300形は1700形の置き換えではなく増備が目的であった為、1編成のみの製造となっています。

2300形の設計

Cassiopeia sweet, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:OER_2300_sideview_LTD-Exp.png
特急車時代の側面図

1700形はデハ1700形（制御電動車）-サハ1750形（中間付随車）-デハ1700形（制御電動車）の3両編成で、車体重量の関係で車体長が制御電動車16800mm、中間付随車20000mmとなっています。

2300形は1700形と共に運用される為、座席配置を揃えたいところです。しかし、ベースとなる2200形が全電動車で、8個モーター制御（2両1ユニット）となっていることから、3両編成は組めず1700形と同一編成・座席配置には出来ませんでした。2300形は全電動車4両編成、車体長も2200形と同じ17500mmとなりましたが、車体幅は2200形の2700mmから広げられ、2800mmとされました。編成・車番は以下の通りです。

デハ2301（制御電動車）-デハ2302（中間電動車）-デハ2303（中間電動車）-デハ2304（制御電動車）

先頭車は非貫通型で、前面2枚窓で傾斜のついた当時流行の「湘南顔」（国鉄80系湘南電車に似たスタイル）となりました。塗装は1700形を踏襲した黄色と青のツートンカラーですが、正面の塗分けが湘南電車に準じたものでした。

1700形は転換クロスシートでしたが、2300形では回転式リクライニングシートを採用し快適性を向上させました。しかし、3000形SE車では軽量化の為リクライニング機構を廃した回転式クロスシートとなりました。再びロマンスカーにリクライニングシートが採用されるのは1980年登場の7000形LSE車となります。前面展望は1700形や3000形SE車同様、運転席越しに楽しむことができます。ドアは両先頭車の中間車寄りに片側1箇所とされ、中間車には非常口を設置しています。「走る喫茶室」のカウンターはデハ2303の中央部に設置されました。

2300形の運用

1955年4月1日に運転開始、ダイヤは1700形と共通なので、高性能な2300形にとっては余裕がありました。

2300形の登場から2年後の1957年に3000形SE車が登場、1959年にはSE車の増備に伴い2300形は特急運用を離脱、僅か4年の特急運用時代を終えました。2300形は2ドアセミクロスシート化され、新造された同仕様（但し前面は貫通型）の2320形2編成と共に、特急を補佐する準特急運用を中心として通勤運用にも入りました。

1963年に3100形NSE車が登場、特急が増発されたことで準特急は廃止されました。2300形と2320形は3ドアロングシート化・中間車を先頭車化しての2両編成化・非貫通先頭車の貫通型化といった改造が施され、以降は2200形や2220形と共に通勤車として活躍しました。

富士急での活躍

Cassiopeia sweet., Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Fujikyu-5700-2300.jpg
富士急5700形　元・小田急2300形

2300形は1982年8月に廃車されましたが、富士急に譲渡されて2200形・2220形・2320形と共に富士急5700形として活躍しました。元2300形の車両は1995年10月30日に廃車（富士急5700形は1997年3月31日までに全車廃車）となっています。3000形SE車は譲渡車含め1992年3月までに運用を終えたので、2300形は特急時代こそ短かったですが後継の3000形SE車より長く生き残ったことになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は「小田急ロマンスカー2300形」について解説しました。

当時、ロマンスカーの利用客が増加し、車両の増備が必要とされる中、従来型の1700形は設計が旧式化しすぎていて、新型の3000形の登場を待っていると間に合わない状況でした。繋ぎとして2300形が製造されました。1編成のみの存在で、共通運用の1700形とは座席配置が合わず、共通のダイヤでは性能を生かしきれませんでした。そして、程なく3000形が登場し特急の座を追われてしまいます。しかし、2度にわたり大規模な格下げ改造を受け、準同型の仲間となった2200形・2220形・2320形とともに活躍し、さらに地方私鉄に譲渡されて、後継車の3000形より長く生き延びました。特急としての期間は短くても、長く人々を運んだのです。

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