E751系 汎用性と引き換えのコストダウンで運用可能線区が限られすぎた結果…

鉄道
MaedaAkihiko, CC BY-SA 4.0 , ウィキメディア・コモンズ経由で https://commons.wikimedia.org/wiki/File:JRE_Series-E751_Tsugaru.jpg

こんにちは!今回はJR東日本E751系特急電車について解説します。汎用性を生かし、現在も特急に臨時列車に幅広く活躍するE653系をベースに生まれたE751系はコストダウンが図られ、運用線区に最適化された仕様とされます。しかし、E751系の活躍の舞台へと新幹線が延伸してきたのです。

最高速度130km/hの「スーパーはつかり」でデビュー

かつて上野~青森を結んだ特急「はつかり」は東北新幹線の開業後、盛岡~青森間の特急となり、青函トンネル開通後は一部列車が函館に延伸されました。車両は国鉄485系が用いられ、最高速度120km/h(青函トンネル内のみ140km/h)で運転されていました。その「はつかり」向けに新型車両E751系が開発され、「はつかり」のうち同車で運用される列車に「スーパーはつかり」の列車名が与えられました。

E751系は6両編成3本が製造され、2000年3月11日より盛岡~青森間の「スーパーはつかり」7往復で運転を開始。5往復は130km/h運転、検査日に485系で代走する2往復は120km/h運転のダイヤとされました。最速列車は盛岡~青森間を表定速度103.6km/hで走り、所要時間は従来より10分短縮し1時間58分で結びました。

永尾信幸, CC BY-SA 3.0 http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/, ウィキメディア・コモンズ経由で
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スーパーはつかり時代のE751系

不要な機能を省略してコストダウンした設計

E751系は「フレッシュひたち」(上野~いわき)に使用されていたE653系を基本に、コストパフォーマンスを考慮、運用線区に合わせた仕様の車両です。

E653系より厳しい環境下で運用される為、耐寒耐雪構造の強化がなされ、ライトも高い位置に設置され印象も変わっています。

客室はデッキとの仕切り扉を寒さ対策のため変更しました。その他は概ねE653系に準じ、普通席のシートピッチは910mmとされています。E653系にはグリーン車の設定がありませんでしたが、E751系には半室グリーン車が設定され、ミニ新幹線E3系に準じ2+2列配置・シートピッチ1160mmとなりました。

「はつかり」の一部列車は青函トンネルを通り函館に向かいますが、E751系は当面青森止まりの列車用とされ、青函トンネル入線に必要な保安装置は搭載されず、準備工事のみに留められました。

E751系は130km/h運転が可能で、青函トンネルでは140km/h運転も可能な設計でした。

E653系は交直流両用でしたが、E751系は直流区間に乗り入れない為、交流専用としました。

直流区間・青函トンネルに入れない仕様とされたE751系。このコストダウンがE751系の将来の活用の幅を狭めることになってしまいました。

青函トンネルに入れず、「白鳥」運用には就かなかった

E751系の増備は以降行われず、6両編成3本の小所帯で、先輩の485系に支えられながら活躍します。

2002年12月1日、東北新幹線八戸延伸に合わせ、特急「(スーパー)はつかり」(盛岡~青森・函館)、快速「海峡」(青森~函館)は廃止され、青函連絡の全列車が特急に再編されました。青函連絡を担う特急「(スーパー)白鳥」(八戸~函館)と、本州内完結で補完する特急「つがる」(八戸~青森・弘前)が設定されました。

青函連絡を担う「スーパー白鳥」は新造されたJR北海道789系、「白鳥」は「はつかり」用だった485系が運用に入りましたが、E751系は青函トンネルに入れない為、「つがる」専用となります。E751系は「つがる」のうち7往復と、間合い運用で津軽線普通列車1往復を担当、「スーパーはつかり」と同様に一部列車は検査日に485系で代走可能なダイヤです。

前述の通り耐寒耐雪構造はE653系より強化されていましたが、2006年~2007年にかけ耐寒耐雪構造のさらなる強化改造が行われ、前面スカートの形状が変更されました。

Rsa, CC BY-SA 3.0 http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/, ウィキメディア・コモンズ経由で
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耐寒耐雪構造強化改造後のE751系 前面スカートの形状が変更された

性能を生かせる線区が無くなり、中間車はわずか10年でお役御免

2010年12月4日のダイヤ改正で、東北新幹線は新青森まで延伸されました。これにより「(スーパー)白鳥」は新青森~函館間に短縮され、「つがる」は廃止されました。

この時のダイヤ改正で新潟~青森間の特急「いなほ」が新潟~秋田間に短縮となり、「いなほ」の秋田~新潟間は同区間で運転されていた特急「かもしか」と統合されることになります。この列車が「つがる」の列車名を引き継ぎ、新生「つがる」として運転を開始しました。新生「つがる」はE751系の転用準備の間、485系で運転されました。

2011年4月23日、E751系は需要に合わせての6両編成から4両編成への減車、789系とのグリーン車位置統一のための編成方向転換を終え、「つがる」の運用に入りました。編成から外れた中間車は保留車となりましたが、2015年11月30日に廃車。中間車は製造から15年での廃車となり、運用期間はわずか10年と短命に終わったのです。

「つがる」の運転される奥羽本線秋田~青森間の最高運転速度は95km/hで、130km/h運転が可能なE751系の高性能を生かすことはできませんでした。これまでと同様、検査日や臨時列車は485系で代走されましたが、最高速度が低く抑えられた為、代走用の特別なダイヤの設定はされませんでした。

「つがる」は秋田~青森間に4往復、大館~青森間に2往復(毎日運転の臨時列車扱い)が設定されました。

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短編成化後のE751系

「つがる」乗客減少で減便続く

秋田~青森間の特急を再編し誕生した新生「つがる」ですが、乗客の減少による減便が続きます。

2014年3月15日のダイヤ改正では大館~青森間の2往復が廃止されましたが、同改正で廃止された寝台特急「あけぼの」の代替として秋田~青森間に1往復(毎日運転の臨時列車扱い)が追加され、「つがる」は秋田~青森間の5往復(臨時含む)となります。

2016年3月26日のダイヤ改正で「つがる」は臨時1往復含め2往復が廃止、3往復に減便されました。同ダイヤ改正で北海道新幹線が開業、「(スーパー)白鳥」が廃止され、運用を失った485系は廃車されましたが、減便により検査時でもE751系だけで運用が回せるようになりました。

その後、「つがる」は3往復運転のまま推移していましたが、2024年3月のダイヤ改正では1往復が停車駅の少ない速達列車「スーパーつがる」となり、E751系は「スーパーはつかり」廃止から20年以上を経て、再び「スーパー」を名乗ることになりました。

E653系大活躍の一方で

ベース車であるE653系は「フレッシュひたち」運用を後継のE657系に譲った後、耐寒耐雪構造を強化する改造を受け「いなほ」(新潟~秋田)・「しらゆき」(新潟~新井)での運用に就きました。また、2編成は波動用となり、直流区間・交流区間を問わず走行できる性能を生かし様々な臨時列車に投入され、大活躍しています。現在でも製造された全車が現役で頑張っています。

一方、E751系は運用線区が交流区間に限られ、青函トンネルにも入れなかったことから、JR東日本で唯一交流区間のみを走る特急となった「つがる」での運用となり、「つがる」の需要の関係で中間車は10年で運用を失い、その後廃車となりました。

E653系の耐寒耐雪構造強化型として交直流両用で製造されたならば、JR東日本で波動用車両が不足している状況から、6両編成のまま広い活躍ができたかもしれません。その場合、現在のつがるは元から4両編成のE653系で運用されていたのでしょうか。

また、交流専用車であっても青函トンネルに入線可能だったならば、「白鳥」として2016年までは全車が活躍できたことでしょう。

E751系は余計な機能を省略し、コストパフォーマンスの向上を図りましたが、結果として活用の幅が狭まり、中間車は短命に終わりました。E751系のコンセプトが成功だったのかは社外からはわかりませんが、汎用性とコストの問題の難しさが分かります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は「E751系」について解説しました。

運用線区に特化することでコストダウンを図ったE751系ですが、新幹線によって当初の運用を追われると、転用先が限られてしまいます。中間車は早期に廃車。残された車両も高性能を活かす場を失いました。一方、ベースとなったE653系はその優れた汎用性を生かし定期・臨時双方で大活躍、全車が健在です。運用可能線区の違いが両形式の命運を分けました。

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。

参考文献

国鉄・JR悲運の車両たち 名車になりきれなかった車両列伝 寺本光照 JTBパブリッシング

残念な鉄道車両たち 池口英司 イカロス出版

つがる(E751系) – JR東日本

Wikipedia

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