こんにちは!今回はJR東日本215系について解説します。215系は運用が少なく、多くの時間を車両基地で過ごしていることから「ニートレイン」というあだ名がついてしまいました。なぜ、215系は乗客からの評判は良かったのにもかかわらず「ニートレイン」と呼ばれるようにになったのでしょうか。
朝夕は通勤ライナー、日中は快速列車として走るオール二階建て電車
215系は朝夕は遠距離通勤客向け着席サービスを担う通勤ライナー(着席通勤列車)として、日中は特別料金不要の快速列車で運用するべく開発されました。
編成両端2両ずつを電動車とし、中間に付随車6両を挟んだ10両編成(4M6T)を組みました。
オール二階建て通勤電車として紹介されることも多いですが、両先頭車の客室はハイデッカーで台枠は通常の電車と同じ構造になっており、車体下及び台枠上客室床下の機器室に機器類を搭載しています。
編成はグリーン車2両、普通車8両で座席定員はグリーン車180人、普通車830人となっています。ドアは片側2か所・片開き式で、座席はグリーン車はリクライニングシート、普通車はボックスシートとなっています。車体にはDouble Decker Linerの略称DDLのロゴが描かれていました。
基本的なシステムは国鉄211系に準拠しますが、抵抗短絡後の電流落ち込み値を高く設定し、弱め界磁率を35%から30%にすることで重量増加と120km/h運転に対応しました。
215系デビュー 乗客からは好評だったが遅延の原因に
215系は1992年3月に先行車1編成が落成、4月20日から「湘南ライナー」1往復、快速アクティー1往復で運転を開始しました。1993年には増備車3編成が落成、1993年12月1日より「湘南ライナー」2往復、「湘南新宿ライナー」1往復、快速アクティー5往復が215系での運転とされました。また、ライナーの運用がない土休日は行楽臨時列車の「ホリデー快速ビューやまなし」(東京~小淵沢)で運転されました。
通勤ライナーでは基本的に特急車両が使用されていたのでボックスシートの215系は設備面では見劣りしますが、その座席数の多さで着席の機会を増やしました。
日中の快速運用では特別料金不要で乗れる2階席として人気を博し、全席クロスシートの車内は特別感もあり好評でした。
1998年3月14日からは土休日に「ホリデー快速ビュー湘南」(新宿~平塚)、「ホリデー快速ビュー鎌倉」(新宿~逗子)としての運転も始まりました。両列車は後述する2001年12月1日の湘南新宿ライン開業に伴い役割を譲り廃止されています。
2000年12月31日~2001年1月1日には21世紀を迎えるのを記念したカウントダウン団体臨時列車「21世紀記念列車 215(GO)号」として215系が山手線外回りを池袋駅発着で一周運転しました。2001年12月31日~2002年1月1日にも新年カウントダウンの団体臨時列車として215系が品川発着で山手線外回りを一周しています。
乗客から好評の一方で、乗降に時間がかかる点が問題でした。片開き式2ドア車の上、客室との間に階段のある215系は乗降に時間がかかり、日中の快速アクティー運用では遅延が発生しやすかったのです。首都圏における2ドア車の快速・普通列車運用における乗降性の問題はかつて急行型電車や185系でも悩まされた問題でした。また、付属5両編成の計画が実現せず、東海道本線の他列車が15両編成の中215系は短い10両編成で下運用できなかった点も原因でした。
計画の名残で215系の先頭車には電気連結器が装備されていました。付属編成は編成下り方2両を電動車、上り方3両を付随車とする2M3Tの5両編成で、基本編成と付属編成を連結し15両編成を組んだ際の座席定員は1502人の予定でした。この計画が実現していたら215系の運命は違っていたのかもしれません。
日中の運用を失いほとんど車庫で寝ている「ニートレイン」へ
2001年12月1日のダイヤ改正で湘南新宿ラインが開業すると215系は快速アクティーを撤退し、湘南新宿ラインでの運用に就きます。当時の湘南新宿ラインは新宿発着の東海道本線・横須賀線方面列車が設定されており、215系はその運用に入りました。
なお、湘南新宿ラインと紛らわしいということで2002年12月1日に「湘南新宿ライナー」は上りを「おはようライナー新宿」、下りを「ホームライナー小田原」に改称されています。
2004年10月16日のダイヤ改正で池袋駅の配線改良工事完了に伴い、湘南新宿ラインの全列車が宇都宮線・高崎線方面と東海道本線・横須賀線方面を直通するようになり、同時に使用車両がE231系に統一されたことで215系は日中の定期運用を失いました。
以降、215系は平日朝夕の「湘南ライナー」、「おはようライナー新宿」、「ホームライナー小田原」の運用と春~秋の土休日の「ホリデー快速ビューやまなし」のみの運用となり、運用が少なくほとんどの時間を車両基地に留置されていることから一部の鉄道ファンには「ニートレイン」と呼ばれていました。そして、2021年3月13日ダイヤ改正で東海道本線系統の通勤ライナーが特急「湘南」に格上げされたことで215系は完全に運用の場を失い、全車が廃車解体されました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「215系」について解説しました。
215系は朝夕は着席通勤需要を担う通勤ライナー、日中は通常の快速列車として活躍する二階建て通勤電車として開発されました。その座席数で通勤ライナーとして高い着席需要を満たしました。快速列車としては特別料金なしで2階からの眺めを楽しめるとして利用者からは好評を集めます。豊富な座席数と優れた眺望を活かし、土休日にはホリデー快速として行楽客輸送も担いました。しかし、215系は片側2ドアで客室へは階段がある故に、快速運用では乗り降りに時間が掛かり、遅延の原因となりました。また、付属編成の計画が実現せず、他列車が15両の中を10両で運転されたことも活躍の場が減った一因でした。結果、215系は日中は車両基地に留まることとなり、朝夕の限られた時間だけ稼働するようになってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。
参考文献
国鉄・JR悲運の車両たち 名車になりきれなかった車両列伝 寺本光照 JTBパブリッシング
残念な鉄道車両たち 池口英司 イカロス出版
葬式鉄もノーマーク、2階建て電車「215系」の引退 東洋経済オンライン
あぁ~残念!博物館入りすることなく廃車に 悲運なJR東日本の車両3選 乗りものニュース
2階建て電車の「215系」が山手線を走った日とは?歴史的な激レア運用の”夜” 乗りものニュース
ついに定期運用終了、その後は?全2階建て車両の215系 鉄道コム
なぜゴージャス2階建て列車は「ニートレイン」と揶揄されたのか 定期運行終わるJR「215系」の盛衰 J-CAST ニュース
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