開業当初は無かった!全車指定席化は原点回帰?新幹線の自由席の歴史

鉄道

こんにちは!今回は最近話題となることの多い、新幹線の自由席の歴史について解説します。

2023年末より繁忙期の「のぞみ」が全車指定席化

2023年9月13日、JR東海とJR西日本はゴールデンウイーク・お盆・年末年始の3大ピーク期に「のぞみ」を全車指定席で運行すると発表しました。そして初回は2023年12月28日~2024年1月4日に実施されました。

近年、新幹線や在来線特急の全車指定席化が相次ぎ、自由席が姿を消しています。しかし歴史をたどると、元々新幹線や在来線特急に自由席は無く全車指定席で運行されていたのです。

新幹線に自由席が設定されたのは伊豆観光がきっかけ

東海道新幹線の開業当初は「ひかり」「こだま」ともに全車指定席でした。当時の在来線特急は全車指定席で自由席が無かったことから、新幹線が全車指定席とされるのは自然な流れと言えます。また、当時はひかりとこだまで料金体系が異なっていました。

しかし開業後、伊豆方面へのレジャー需要で「こだま」の東京~熱海間が週末に混雑するようになり、席が取れない人が続出しました。そして、「立っていても構わないから新幹線に乗せてほしい」との声が寄せられるようになります。また、当時は座席番号を台帳で確認して切符に手書きする手作業での発券であった為、発券には時間と手間がかかり、混雑時には発券能力が不足することもありました。

そこで1964~1965年の年末年始と1965年3月~4月に期間限定で試験的に「こだま」の自由席が設定されました。1964年12月26日~1965年1月15日は割引なしで1~6号車(2等車)が自由席に、1965年3月20日~4月11日は指定席の100円引きの料金設定となり1~5号車(2等車)が自由席になりました。これは現在の自由席とは異なりどの列車でも乗れるものではなく、指定された列車に乗らなければならない列車指定制の自由席で、自由席車両座席定員の140%まで発券されました。自由席設定に伴いデッキに立ち乗り客も出ることからデッキの空調・換気能力を向上する改造も実施されました。

1965年5月20日より自由席が周年設定になり、1~6号車(2等車)に加え7号車(1等車)を自由席としました。しかし運輸省との関係で時刻表上は「当面の間」との扱いになっています。

1965年10月1日からは列車指定制から任意の列車に乗れるようになりました。この時、特急自由席の制度が正式に採用され、山陽本線在来線特急にも自由席が設定されるようになりました。

またこの時、コンピューター予約システム「MARS-102」導入とみどりの窓口設置により発券の問題も解消しました。

1966年10月には「こだま」の1等車が7、8号車の2両から8号車1両のみの連結となったことから、8号車にに指定席と自由席が半分ずつ設けられました。このとき2等車が連結されるようになった7号車は自由席になっています。

1970年10月1日に「こだま」のグリーン車(1969年1等車)は全車指定席になり、新幹線のグリーン車自由席設定は無くなりました。

ひかり号は自由席を設定せず立席特急券で需要に対応

短距離利用の多い「こだま」に自由席が設定されましたが、長距離利用が多く料金体系も異なる「ひかり」は全車指定席のままとされました。

自由席は設定されませんでしたが、1965年12月28日より繁忙期のみひかり立席特急券が販売されます。列車指定制でひかり指定席特急券の100円引きとされました。

1967年1月よりひかり立席特急券は通年販売になりました。

山陽新幹線岡山開業で「ひかり」「こだま」の料金が統一され「ひかり」にも自由席が登場

1972年3月15日、山陽新幹線岡山開業に伴い「ひかり」と「こだま」の料金が統一され、「ひかり」にも自由席が設定、1号車~4号車(普通車)が自由席になりました。

山陽新幹線岡山開業に伴う「ひかり」「こだま」の料金統一の経緯はこちらの記事で解説しています。

民営化後の新種別「のぞみ」は全車指定席に回帰するも、増発に伴い自由席を設定

1992年3月14日に「のぞみ」の運転が始まりました。のぞみ料金が設定され、自由席は設けられず全車指定席となりました。

2003年10月1日のダイヤ改正で「のぞみ」の増発と「ひかり」の減便が行われ、毎時のぞみ2本、ひかり6本、こだま3本の「2-6-3ダイヤ」から毎時のぞみ7本、ひかり2本、こだま3本の「7-2-3ダイヤ」となりました。これに伴いひかりの本数が激減した為、「ひかり」利用客への救済として「のぞみ」の1~3号車(普通車)が自由席となり、自由席は「ひかり」・「こだま」と同額で乗車できるようになり、指定席に設定されるのぞみ料金も値下げされました。

東北新幹線「はやて」の登場、JR東日本の新幹線における最速達列車の全車指定席化

2002年12月1日、東北新幹線八戸延伸に伴い最速達列車として「はやて」の運転が始まりました。「はやて」は全車指定席(仙台以北で区間運転の列車には自由席が設けられた)となり、「はやて」と併結して運転される秋田新幹線「こまち」も「はやて」に合わせて全車指定席に変更されました。これは長距離利用の着席ニーズに応えるとともに車内検札を省略することが目的でした。

2011年3月5日、新登場のE5系で運転される「はやぶさ」が東北新幹線の最速達列車として設定されます。「はやて」と同様に全車指定席となり、「のぞみ」のように追加料金が設定されました。

2014年3月15日に仙台以北区間運転の「はやて」から格上げされた「はやぶさ」95号・96号には引き続き自由席が設定され、自由席乗車時には追加料金の設定はありませんでした。しかし2016年3月26日に仙台以北区間運転の「はやて」93号・98号、「はやぶさ」95号・96号の自由席が廃止され、「はやて」「はやぶさ」の全列車が全車指定席となっています。

2015年3月14日には北陸新幹線が金沢まで開業、北陸新幹線の最速達列車として設定された「かがやき」も全車指定席となりました。

進む自由席の廃止

JR東日本では在来線特急の全車指定席化を進めており、JR西日本やJR北海道でも在来線特急の全車指定席化が進んでいます。

新幹線においても2022年3月12日にはミニ新幹線の特急料金制度が改定されたのと同時に「つばさ」が全車指定席化、2023年9月13日には3大ピーク期となるゴールデンウイーク・お盆・年末年始の「のぞみ」を全車指定席化することが決定し、2023年12月28日~2024年1月4日に初実施されました。

全車指定席化が進められる背景には指定席の座席数確保、途中駅からの乗客の着席ニーズへの対応、繁忙期の混雑による遅延防止、車掌業務の削減などがあります。鉄道会社の業務効率化への効果が大きく、ネット販売により座席指定も容易になっている為、これからも自由席が無くなる傾向は続くと思われます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は「新幹線の自由席の歴史」について解説しました。

全車指定席で始まった新幹線ですが、程なくして増加する需要と当時の発券能力への対処として「こだま」に自由席が設定されました。その後、「ひかり」にも拡大し、新幹線には指定席と自由席が併存する時代が長く続くことになります。各駅停車から速達列車へ広がった自由席ですが、民営化後、JR東日本で速達列車の全車指定席化の動きが起こります。そして、在来線特急にも波及する中、東海道新幹線においても繁忙期限定で「のぞみ」の全車指定席化が図られました。今後も全車指定席化の流れは続くでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。

参考文献

新幹線の謎と不思議 梅原淳 東京堂出版

読む・知る・愉しむ 新幹線がわかる事典 原口隆行 日本実業出版社

JTBキャンブックス 東海道新幹線 須田寛

JTBキャンブックス 時刻表でたどる新幹線発達史 寺本光照

この冬、年末年始は「のぞみ」号を全車指定席として運行します -3台ピーク期に「のぞみ」号の指定席を増やし、ご予約いただきやすくします- JR東海

新幹線のぞみ、全車指定席でも残る「不公平感」 ピーク期の「席取りゲーム」解消だが快適性は? 東洋経済オンライン

山形新幹線の全車指定席化と山形・秋田新幹線の特急料金の改定について JR東日本

「つばさ」全車指定席化 山形・秋田新幹線は「新在通しの指定席料金」へ 2022年春 乗りものニュース

なぜ減り続ける?新幹線や特急の「自由席」がなくなる日 なるほど電車ニュース 土屋武之 毎日新聞「経済プレミア」

JR北海道にも全車指定席の特急列車、自由席の役目は終わったのか?|マイナビニュース

JR東日本特急から「自由席」が消えているワケ「全指定席」化で車内解説などコスト高縮減へ 東洋経済オンライン

JR東日本が進める特急の「全車指定席化」|マイナビニュース

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Wikipedia

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