国分寺市ひかりプラザに保存されている新幹線試作車951形はどのような車両だったのか

鉄道

こんにちは!今回は「新幹線951形」について解説します。国分寺市光町にある総合福祉施設ひかりプラザの北側に、新幹線資料館として1両の新幹線が保存されています。白い車体に青いラインの入った先頭部が丸い車両を見て、「0系新幹線だ」と思う人も多いでしょう。実はこの車両は0系ではなく「951形」という車両です。見た目は0系に似ていますが新型車開発の為の試験車両です。0系の違いなども紹介します。

951形の誕生

東海道新幹線は1964年の開業以来0系が運用されていましたが、後継車の開発も進められていました。

951形は山陽新幹線岡山開業を控えた1969年、将来の時速250km/h運転を見据えた次世代の高速車両開発の為に2両1ユニットが製造されました。951-1と951-2です。新大阪方の951-1は川崎車両、東京方の951-2は日本車両製造が手掛けています。高速化、保守の簡素化、信頼性の向上が開発の目標とされました。951形には様々な新技術が導入され、試験が行われました。

951形で採用された新技術・0系との違いは何か

951形で採用された新技術を0系と比較していきましょう。

車体

0系は鋼鉄製車体でしたが、951形はアルミニウム製車体を採用することで軽量化を図っています。また、0系では床下機器を吊り下げていましたが、951形は床を二重にして下の床に床下機器類を搭載し車体に内蔵するボディマウント構造を採用しました。空気抵抗の削減や機器の防音、高車体剛性化、低重心化の効果がありました。空気抵抗削減の為ノーズも2m伸び、0系の4.5mから6.5mになっています。

横から見るとノーズの長さがよくわかります。

客室窓は0系0番台(前期型)と同じ大窓を採用、951-1は電動ブラインド、951-2は電動カーテンを備えていました。

主電動機・台車

主電動機出力は0系の185kWから250kWにパワーアップしつつも、主電動機の寸法や重量は0系とほぼ同じに抑えています。

車輪径は0系の910mmから1000mmとし、高速性能を向上させました。軸距は0系と同じ2500mmとなっています。軸箱支持方式は0系のIS式に対し軸梁式を採用、これは後述する渦電流レールブレーキ用電磁石の高さを一定に保つためとなっています。

制御系

制御方式はサイリスタ位相制御を採用、無段階で連続的に電圧制御できる上、保守も容易になりました。また、定速度運転装置が搭載され運転士の指令速度に従い自動的に力行、惰行、ブレーキを制御することが可能になっています。

951形の運転席

ブレーキ

0系のブレーキは高速域から低速域までの減速を担う「電気ブレーキ」には主電動機で発電、抵抗器で熱として排出する発電ブレーキを採用、低速域から停車まで減速する「基礎ブレーキ」は電気信号と空気圧で伝達し油圧シリンダーでディスクブレーキを作動させる電磁直通ブレーキを採用していて、他に非常ブレーキ系統を持っています。

0系同様に電気ブレーキと基礎ブレーキの組み合わせを基本にしつつ、951形ではさらなる高速運転を行うためブレーキの改良が行われました。

電気ブレーキは0系と同様に発電ブレーキを採用しましたが、チョッパ装置を使用し発電ブレーキの連続制御を行うことで高速域から低速域まで粘着限界に沿った最大限のブレーキ力を得ることが出来るようになりました。

基礎ブレーキには電磁直通ブレーキに代わり電気指令式油圧ブレーキを採用、空気圧を用いず電気指令を油圧に直接変換しディスクブレーキを作動させます。

それらに加えて渦電流式レールブレーキも採用されました。これは台車に取り付けた電磁石でレールに渦電流を発生させブレーキ力を得るもので、電磁石へは発電ブレーキで発電した電流の一部を送る仕組みとなっています。非粘着ブレーキなので車輪とレールの摩擦力に依存せず、可能部分や摩擦部分が無いため保守が容易となるメリットがありましたが、レールが発熱したり、絶縁継目への鉄粉付着によって絶縁低下を起こすといった問題が発生し、実用化には至りませんでした。

これらの他に緊急ブレーキ系統を備えていました。

連続換気装置

0系新幹線ではトンネル進入時の気圧変動により生じる耳ツン現象への対策として、トンネル進入時に地上子からの信号で吸気弁・排気弁のダンパーを開閉する方式が採用されていました。東海道新幹線ではこの方式で問題ありませんでしたが、トンネルの長い山陽新幹線では換気不足になる為、トンネル走行中でも気圧変動を抑えつつ換気ができる装置が必要でした。

山陽新幹線開業に向け、951形には日立製作所が開発した連続換気装置を搭載、これは吸気・排気に高圧送風機を用いることでトンネル通過時でも車内の気圧変動を抑え換気可能とするものでした。

951形の試験を基に小型化、低騒音化、気圧対応力向上をした改良型が14次車以降の0系及び13次車以前の0系のうちトンネルの多い岡山以西に乗り入れる車両に搭載されました。

また、951形の空調装置は床下に搭載することで低重心化を図っています。

951形の試験

951-1は1969年2月28日に落成、3月3日に東海道新幹線浜松工場に搬入。951-2は3月4日に落成、3月6日に浜松工場に搬入されています。

1969年4月より新大阪~米原間で試験走行を開始、新技術を導入した機器類の試験を行った後、1970年2月から速度向上試験が行われました。しかし大径車輪と渦電流式レールブレーキ用の電磁石によってばね下重量が大きい為、過大輪重の問題が発生し速度向上試験中に枕木が破損する事故が発生します。対策としてばね下重量の削減のために中空軸駆動の改良台車DT9012が開発され、1971年より使用されました。

1972年2月24日15時54分、開業前の山陽新幹線西明石~姫路間上り線で最高速度286km/hを記録、これまで新幹線の最速記録であった1000形B編成の記録(256km/h)を更新し、当時の電車では世界最速記録となりました。

ひかりプラザ新幹線資料館に展示されている951形の速度記録286km/hのプレートと961形の速度記録319km/hのプレート

1973年には後継車の961形が登場し、走行試験を終了した951形は1980年4月に廃車、その後は国分寺市光町の国鉄鉄道技術研究所(1987年、国鉄分割民営化により公益財団法人鉄道総合技術研究所となる)で車両試験台上での試験等に用いられました。

951形で試験された技術の実用化

951形で新幹線初採用となった新技術は後の新幹線の発展に大きく貢献し、現在の新幹線では基本となったものもあります。

前述の通り、連続換気装置は山陽新幹線をはじめ、後に開業するトンネルの多い新路線に必要不可欠な技術でした。

961形でのさらなる試験を経て、1980年登場の東北・上越新幹線200系でアルミニウム製車体、ボディーマウント構造、サイリスタ位相制御が採用されました。現在運転されているすべての新幹線にはアルミニウム製車体が採用され、軽量化に貢献しています。空調装置の床下搭載は1990年登場の「のぞみ」用車両300系で実現、E3系を除く現在運転中の新幹線は空調装置を床下に搭載しています。

ひかりプラザ新幹線資料館へ

951-1は1991年12月に鉄道総合技術研究所から国分寺市に譲渡されました。1994年5月に国分寺市光町の総合福祉施設ひかりプラザ敷地内に設置、同年11月ひかりプラザの開館と同時に新幹線資料館として公開されました。最初に紹介したものです。

国分寺市光町は新幹線ひかり号に由来し、1966年の町名整理・地番整理の際に新幹線の技術開発を行った国鉄鉄道研究所があることから命名されました。

951形は光町のシンボルとなった

総合福祉施設ひかりプラザにはスポーツセンター(体育室・フィットネスルーム)、教育・福祉機関の事務室、喫茶こだまがあり、館内にも新幹線資料室があります。

新幹線資料館となった951-1の車内は運転席を見学出来る他、新幹線の歴史を解説するパネルや風洞試験に用いられた模型、速度記録のプレートが展示され、鉄道関係の書籍や雑誌が置かれています。またNゲージのレイアウトも設置されています。

新幹線資料館となった951-1の車内(画像は修復工事前のもの)

年に2回地域住民による清掃が行われ、塗装も現在までに3回塗りなおされています。2020年にはクラウドファンディングが行われ、翌年に外装だけでなく内装も含めた修復がなされました。

一方の951-2はその後も鉄道総合技術研究所に残り試験を継続し、試験終了後の2008年1月に解体されています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は「新幹線951形」について解説しました。

951形は見た目は0系によく似ていますが、中身は新機軸満載の試験車両でした。951形で培われた技術が後の新幹線車両で実用化され、現在の新幹線車両にも受け継がれています。国分寺市にある「ひかりプラザ」を訪れた際にはぜひ、0系との違いを実際に確かめてください。また、どのような技術が今の新幹線車両に受け継がれているのかを捜すのも楽しいと思います。国立駅より徒歩約7分です。開館日、開館時間は国分寺市の公式ホームページでご確認ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。

参考文献

新幹線テクノロジー 0系から800系九州新幹線の高速車両技術 佐藤芳彦 山海堂

新幹線50年の技術史 曽根悟 講談社

読む・知る・愉しむ 新幹線がわかる事典 原口隆行 日本実業出版社

新幹線 高速鉄道技術のすべて 高速鉄道研究会 山海堂

新幹線はすごい 斉木実 ベストセラーズ

最新新幹線事情大研究 川島令三 草思社

新幹線の謎と不思議 梅原淳 東京堂出版

新幹線、次世代の営業列車を生む「試験車」の系譜 東洋経済オンライン

「ひかりプラザ」新幹線951形、クラウドファンディングで修繕へ マイナビニュース

国分寺市ひかりプラザにある新幹線951形試験電車をリフレッシュ ふるさとチョイス

0系引退の陰で「951形新幹線」物語 夕刊フジ

やった!時速286キロ 記録更新 読売新聞が撮った夢の超特急 新幹線半世紀の旅 読売新聞

Wikipedia

日立評論

光町と新幹線 国分寺市

ひかりプラザ 国分寺市

ぶらり国・府 951形新幹線とは

国分寺のおさんぽスポット ひかりプラザ 国分寺物語

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