コンテナの発明者マルコム・マクリーンと世界初のコンテナ船アイデアルXがもたらした物流革命

船舶
U.S. Navy, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Type_T2-SE-A1_tanker_Hat_Creek_underway_at_sea_on_16_August_1943.jpg

こんにちは!今回は「アイデアルX」について解説します。マルコム・マクリーンによるコンテナの発明は物流に大きな革命を起こしました。

貨物積み下ろし時間を短縮するマルコム・マクリーンのアイデア

コンテナの登場以前、船への貨物の積み下ろし作業は、入港した船から大勢の港湾労働者が袋や樽、木箱に入った貨物を下ろし、同様にして新たな貨物を積み込んでいくという非常に時間が掛かるものでした。積み下ろし作業に遅延が生じ、いつ出港できるか予想できないこともありました。数週間にわたり港に停泊していることもあり、港に停泊している時間が航海している時間と同じぐらいになることも多くありました。

マルコム・マクリーンはノースカロライナ州でトラック運送会社を経営していました。トラックと船が貨物を引き継ぐことは多くありますが、船の貨物積み下ろし時間の問題はトラック運送会社にも影響がありました。港へ荷物をかなり早めに運んでおかなければならず、港での貨物保管の為に倉庫が必要で、港では貨物が紛失、損傷、盗難のリスクにさらされていました。この為、経費がかさみました。

マクリーンは積み下ろし作業の効率化の方法を考えました。最初にトレーラーをそのまま船に搭載する案を考え、そこから同一規格の箱=コンテナというアイデアにたどり着きます。

戦時標準船を改造し生まれたアイデアルX号

1955年、マクリーンはT2タンカー「ポトレロ・ヒルズ」を購入しました。T2タンカーは第二次世界大戦中に製造された戦時標準船で、「ポトレロ・ヒルズ」は1944年12月30日に進水しています。(アイキャッチ画像は同型のT2タンカーで、あくまでイメージです。)

「ポトレロ・ヒルズ」はコンテナを搭載できるよう改造され、船名も「アイデアルX」に改名されました。コンテナはエンジニアのキース・タントリンガーがマクリーンのアイデアを基に設計しました。

コンテナ船とコンテナが完成し、試験航海の日を迎えます。「アイデアルX」はニューアークで58個のコンテナを搭載します。1個積むのにかかった時間は7分で、僅か8時間で船積みは完了しました。「アイデアルX」は1956年4月26日にニューアークを出港し、5月2日にヒューストンに到着しました。海運の、そして物流の歴史が変わった瞬間でした。

コンテナの改良と普及

マクリーンは翌1957年10月、戦時標準船のC2級貨物船を改造したコンテナ船「ゲートウェイ・シティ」を就役させました。「ゲートウェイ・シティ」は226個のコンテナを搭載可能でした。その後も改造船、新造船でコンテナ船を増備していきました。

コンテナは劇的なコスト削減を実現しました。1トン当たりの荷揚げコスト(1956年)は従来の方式が5ドル86セントなのに対し、コンテナでは16セントとなりました。また、貨物の紛失、損傷、盗難の防止効果もあり、それに伴うコストも削減しました。

マクリーンのコンテナの長さは当初33フィートで、「ゲートウェイ・シティ」から35フィートとなりました。これは当時アメリカ東海岸で許容されたトレーラーの長さに由来しています。しかし、アメリカ西海岸を拠点とする他社ではダブルトレーラー輸送の基準から24フィートのコンテナが登場しました。

連邦海事局は海運会社ごとに異なるコンテナ寸法を採用してしまうと、コンテナ輸送の発展を阻害するとして、米国規格協会と協力し、1961年4月に10フィート、20フィート、30フィート、40フィートを米国規格として採用します。この規格は1962年9月に国際標準化機構により国際規格として認められました。現在では20フィート(約6メートル)と40フィート(約12メートル)の2種が主に使われています。

コンテナ輸送は港に大きな変化をもたらしました。

アイデアルX号のその後 最期の地は日本

アイデアルX号は1959年に売却され、ブルガリアの海運会社が購入、「エレミア」と改名され使用されました。しかし、1964年2月8日に悪天候下で大きく損傷し、同年10月20日に日本の解体業者に売却され、山口県平生町で解体されました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は「アイデアルX」について解説しました。

マルコム・マクリーンによるコンテナの発明は、貨物の積み下ろしにかかる時間やコストを大幅に削減し、物流を効率化させました。

最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。

参考文献

図説世界史を変えた50の船 イアン・グラハム 角敦子訳 原書房

図説船の歴史 庄司邦明 河出書房新社

コンテナ船の話 渡辺逸郎 成山堂書店

タイトルとURLをコピーしました