こんにちは!今回はお座敷列車「ふれあい」について解説します。スハ81系の多くが国鉄時代に姿を消した中で、唯一JRに引き継がれ、旧型客車最後のお座敷列車となった「ふれあい」。元は名無しのお座敷列車として登場し、旧型客車最後の特急運用に就いた車両でもあります。
お座敷列車の冷房化を進めたスロ81系
お座敷列車のルーツは盛岡鉄道管理局が1960年10月にスハシ29 103を改造したスハ88 1で、小口団体用として定期列車に増結して使用されました。好評の為、翌年にはオハフ61 868を改造したオハフ80 1が追加されました。
編成単位で運用されたお座敷列車は、名古屋鉄道管理局が1969年5月にオハ35形・オハフ33形を改造したオハ80形2000番台・オハフ80形2010番台(オハ80系客車)で、6両編成を組みました。オハ80系客車は翌年に長野鉄道管理局にも6両編成1本が改造・配置されました。しかし、オハ80系客車は非冷房で、構造上冷房化が困難でした。
そこで、60系客車の冷房付きグリーン車であるスロ62形・スロフ62形を改造したスロ81形・スロフ81形(スロ81系客車)が登場します。1972年より金沢、静岡、門司、長野、名古屋、大阪の各鉄道管理局に順次配置され、1980年3月に東京南鉄道管理局向けの最終増備車が大宮工場で落成しました。この編成が後の「ふれあい」です。
同年6月には門司に12系客車改造のお座敷列車も登場しています。以降は旧型客車に対して新系列客車と呼ばれる12系・14系改造のお座敷列車が主体となっていきます。
「シナ座」と呼ばれた品川客車区時代 旧客最後の特急運用
東京南鉄道管理局に配備された当時、この編成に愛称は無く、単にお座敷列車と呼ばれていました。愛称の無いお座敷列車の編成を区別する為、鉄道ファンの間では配置された場所に応じて「○○座」と呼ばれていました。東京南鉄道管理局のお座敷列車は品川客車区に配置されたことから「シナ座」と呼ばれました。
編成に対する愛称こそありませんでしたが、6両編成の各車両には東京の下町に由来する愛称が付けられました。各車両の車番と愛称は以下の通りです。
1号車 スロフ81 2114 鳥越
2号車 スロ81 2125 湯島
3号車 スロ81 2126 深川
4号車 スロ81 2128 花川戸
5号車 スロ81 2127 向島
6号車 スロフ81 2113 柴又
1983年8月、特急「お座敷踊り子」として東京~伊豆急下田間で運転されました。牽引はEF58またはEF65で、現在に至るまで旧型客車による最後の特急運用となっています。
12系お座敷列車「江戸」の登場により水戸に転属、「ふれあい」と命名
1986年2月、東京南鉄道管理局に12系改造お座敷列車「江戸」が登場します。「江戸」の登場を受けて、スロ81系は水戸鉄道管理局へ転属しました。東京南鉄道管理局時代は名無しのお座敷列車でしたが、水戸鉄道管理局では「ふれあい」の愛称が付けられました。また、水戸客車区にちなんで「ミト座」と呼ばれることもありました。
東京南鉄道管理局時代同様、各車両に愛称が付けられました。愛称は水戸鉄道管理局管内の観光地に由来します。また、号車番号が東京南鉄道管理局時代とは逆になりました。
1号車 スロフ81 2113 筑波(元・柴又)
2号車 スロ81 2127 大洗(元・向島)
3号車 スロ81 2128 奥久慈(元・花川戸)
4号車 スロ81 2126 五浦(元・深川)
5号車 スロ81 2125 勿来(元・湯島)
6号車 スロフ81 2114 相馬(元・鳥越)
1987年4月、国鉄分割民営化によりJR東日本に継承されました。他のスロ81系は12系・14系改造車に置き換えられて国鉄時代に廃車されていました。その為、「なごやか」はJRに引き継がれた唯一のスロ81系であると同時に、唯一の旧型客車のお座敷列車となりました。
「ふれあい」の運用は国鉄・JR線だけでなく、茨城県の私鉄である関東鉄道や鹿島鉄道(現在は廃線)への入線実績もあります。
485系「リゾートエクスプレスゆう」にバトンタッチ、引退
「ふれあい」は1990年7月に廃車され、旧型客車のお座敷列車はすべて姿を消しました。
後継は1991年5月に登場した485系改造ジョイフルトレイン「リゾートエクスプレスゆう」です。「リゾートエクスプレスゆう」はお座敷列車ではなく座席車で、車内は2+1配置でリクライニングシートを配置、4号車はまるごとフリースペースとなっていました。
しかし、「リゾートエクスプレスゆう」は1998年9月に乗客からの要望に応え、フリースペースを除きお座敷列車化され、2018年まで活躍しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「ふれあい」について解説しました。
「ふれあい」は当初名無しのお座敷列車で、スロ81系の最終増備車として登場しました。「シナ座」時代には特急「お座敷踊り子」に充当され、旧型客車として最後の特急運用に入りました。後継車の「江戸」の登場で東京南鉄道管理局での役割を終えますが、水戸鉄道管理局に転属し「ふれあい」の愛称が与えられました。この転属によりスロ81系として、旧型客車のお座敷列車として唯一JRに引き継がれました。水戸での後継車「リゾートエクスプレスゆう」に役目を譲り引退となりましたが、座席車として登場した「リゾートエクスプレスゆう」は乗客からの要望により「ふれあい」同様のお座敷列車に改造されました。
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参考文献
ジョイフルトレイン図鑑 小賀野実 JTBパブリッシング
Wikipedia