こんにちは!今回はYAL-1Aについて解説します。
レーザーでミサイルを迎撃
YAL-1Aは空中発射レーザーを用いた弾道ミサイル迎撃の為の試験機で、貨物型ジャンボジェットの747-400Fを改造し制作されました。Yは試験機を意味し、ALは「Airborne laser」の略です。
発射から大気圏内飛行中のブースターフェーズにある弾道ミサイルを、敵のミサイル基地から数百キロ離れた領空外から迎撃することを目的としていました。
化学酸素ヨウ素レーザー
YAL-1Aは気体レーザーの一種である化学酸素ヨウ素レーザー(Chemical Oxygen-Iodine Laser,COIL)を搭載しています。水酸化カリウム、過酸化水素、塩素を混合し化学反応を起こし、そこにヨウ素ガスを吹き込んで励起状態とします。高温の混合ガスをノズルから噴射すると、断熱膨張によってエネルギーがレーザーとして放射されるという原理です。
胴体内部に6基のCOILモジュール、薬品保管場所、バトルマネジメント室、ビームコントロールシステムが設置され、機首には旋回式レーザー照射タレットが取り付けられました。
YAL-1Aの試験
YAL-1Aは747-400Fの新造機を改造して制作されました。一旦貨物機として完成させ、2000年1月6日に初飛行した後に改造が実施され、2002年7月18日に改造後の初飛行をしました。この時点ではCOILモジュールは非搭載でした。
2001年、実機への搭載を前にモハべ空港にストアされていた元エアインディアの747-200の胴体を使用し、エドワーズ・バーク・フライトテストセンターシステム統合研究所でテストが行われました。
YAL-1Aは2004年には地上でのレーザー発射試験に成功、2007年3月15日には飛行中に目標追跡用の低出力レーザーの命中に成功しました。2008年2月にはようやく6基すべてのCOILモジュールの搭載が完了し、2009年8月18日に飛行中のレーザー発射試験に成功しました。
しかし、試験と調整の繰り返しによってスケジュールは遅延し、開発予算が超過しました。また、運用には10~20機が必要となり、製造コストは1機あたり15億ドル、運用費は1機あたり1年間で1億ドルと試算され、計画は現実的ではないと判断されました。
国防省は2010年度の国防予算から2号機の予算を削除し、2011年12月に計画は中止されました。
計画中止後、YAL-1Aはストアされましたが、2014年9月に解体されました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「YAL-1A」について解説しました。
YAL-1Aはジャンボジェットにレーザー砲を搭載した超大型の迎撃機でしたが、実用化はされずに姿を消しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。ぜひ他の記事もお読みになってください。
参考文献
ライバル対決名旅客機列伝1 超大型四発機ボーイング747VSエアバスA380 山手章弘 イカロス出版
747ジャンボ物語 杉江弘 JTBパブリッシング
ジェット旅客機進化論 浜田一穂 イカロス出版
Wikipedia日本語版・英語版